〜さすらいの語り部たち〜 7月のテーマ:「私の恐怖体験」

●ロッカー永田さん



これまで私は数々な恐怖を体験してまいりました。
小学校時代、昼寝していた私に「おい!」と声をかけた座敷わらし、
中学時代の肝試し大会で「何もなかったぜ!」と帰ってきた友人の後ろに連なる黒い影の行列、
大学時代誰もいないはずのアパートの部屋(2F)の窓から聞こえた「バカヤロー」の声、
しかしなんと言っても、高校時代の「ヤメロー事件」でしょう。

高校時代、私は寮に入っておりました。
その日、僕はいつものように友人Y君の部屋に遊びに行ったのです。
するとY君は私の顔をみるなり、「永田、出たよ」というのです。
「何が?」「幽霊」「え!」
ちなみにY君はクリスチャンでしたから、それまで幽霊など信じていませんでした。
僕たちが怪談大会をしても、一人醒めたように僕たちの話を聞いているような
人だったので、そのY君の切り出した話に僕は本当に驚きました。

「で、どんなだったの?」
「俺さ、昼寝してたんだけどさ、ふと起きたら、あ、横向いて寝てたんだけどね、目覚ましたらなんか人がのっかかってるんだ。俺の上に」

Y君はあまりおしゃべりな方ではありません。
しかし、逆にとつとつとした語り口が逆に凄みを感じさせます。

「最初は永田が遊びにきたのかと思って、めんどくさいと思ってよく確かめずにまた寝たんだ。でも次に起きてもまだいるんだ。横向いて寝てたから顔とかは見ていないんだけど、なんか俺の顔に息を吹きかけてるんだ。それでおかしいと思って顔をそっちに向けたら消えたんだ」

Y君は本当におびえています。
そうかこの部屋にも出たか。
その寮は怪奇現象がよく発生することで有名でした。
子供が遊んでいる姿や声、カーテンの隙間から覗くお婆さん・・・。
しかしY君の経験した内容は、過去のこうした話を超えて、直接的な行動を起こしているように思えます。

「しばらくこの部屋に寝泊りしない方がいいよ」

僕がそういった瞬間です。
Y君の目つきが急に険しくなり、私の方をにらみ、こう言ったのです。

「ヤメロー」



ちょっとこれ以上書けません。さようなら。


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このページは2001年7月20日に初めて公開しました。