〜さすらいの語り部たち〜 7月のテーマ:「私の恐怖体験」

●リカさん



赤ちゃんが生まれてこな〜い!?

予定日を十日過ぎた。
陣痛は?うんともすんともない。検診に行く。
先生曰く、もう十分生まれてもいいくらいに育っているんだけどな。
頭が大きいくらいだ。でも子宮口も全然開いてないし。
「また来週来て。」と帰される。

(一ヶ月も前から心の準備してるのに〜(T-T )

一週間何ごとも無い。検診に行く。
胎児の大きさ的にも限界ということで、陣痛促進剤を飲むことに。

入院の準備をして、4時間おき(だったかな?)に薬を飲む。
少しでも陣痛が起きるように病院の中を歩く。

2回目、3回目…薬は許容量いっぱいまで飲んだ。
何も起きない。
「夜に、ってこともあるから。一晩泊まって」

朝になってしまった。
「また来週来て」と帰される。がっくり。

さらに一週間後、予定日から25日目。
検診に行く。全く兆候無し。
促進剤点滴するか。

分娩台に横になり、子宮の収縮や胎児の心音を聞く機械をつけて点滴開始。
いよいよ生まれるぞー、わくわく。しか〜し...

何時間経ったかな?
やっぱり陣痛が起こる兆候は無い。

なんで〜???

先生が来て「これ以上促進剤打つと母体にも胎児にも影響あるから終わりにしよう。今日は帰っ…」

“え〜??そんなあ。赤ちゃんはどうなるの”そして私の口から出た言葉。
「今日切ってください。おねがいします」

夜の7時くらいだったと思う。あわただしく準備をして切開開始。
若い看護婦さんの声が聞こえた。
「遅くなっちゃうね、お母さんに電話した?」

まあ一時間程度の、切って出すだけだから。
でも、自然分娩と違って赤ちゃんが自分から外に出ようってしないのね。
だから、看護婦さんが私の体の上にどかっと乗って、よいしょって押し出してた。
まじ〜?

生まれた時は泣かなかった。顔色も紫色だった息子。
あとでベテランの看護婦さんが耳元で言ってた。
「今日生んでよかった。ぎりぎりだったよ」
…平成3年4月22日。

命拾いした息子も今10才。
元気いっぱい。私が言うもの何だけどなかなかの美男子。キリ丸に似ている(って言われた事がある)。

まあ、出産と知的障害との関係はわからないけど、べつにその時のことをどうこう思ってない。
今の息子がそのままがかわいいから。

ただね、今の社会を見ちゃうとね、命拾いしたのが良かったのかなって、ふと思っちゃう。
わかってる!!そういう問題じゃないって。
息子は生まれてきてよかったに決まってる。
でも、そこが母親なのかな。だから自分でも時々嫌になるわけ、母親でいることが。
だからここへ来るのかもしれない。みんなの声が聞こえるから。我に返らせてくれるから。
(なあんちゃって〜 ←古い! でもほんと。)おわり。



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このページは2001年7月14日に初めて公開しました。